家族の変容や社会環境の変化に伴い,介護をめぐる規範に大きな揺れが生じている今日,介護を行う前の世代の人たちは,将来の親の介護について,どのような意向をもっているのだろうか.本稿は,成人子の介護意向について,関係性と規範という二つの要素に焦点をあて,介護意向の男女別・親別の分布状況の検証と,介護意向に作用する要因について二項ロジスティック回帰分析を行った. その結果,関係性,規範という二つの異なる要因が併存して現代の 30~40歳代の介護意向に影響しているという示唆が得られた.介護意向の分布では,女性はいずれの親に対しても,男性より有意に介護意向が高く,女性が介護するものというジェンダー規範の存在が考えられる.二項ロジスティック回帰分析では,実親に関して女性は父との関係良好度が,男性は父母との関係良好度と,子による介護規範の影響が推測された.義理親に対しては男女とも関係良好度の影響が大きいと考えられる一方,長男の妻であることは介護意向を有意に高めることが示唆された.親との関係性が重要である一方,規範も効力を失っていないことがうかがえる結果となった.