介護保険制度の訪問介護事業をめぐっては,事業収益の二極化が起きており,公定価格の下で事業者間の競争が起きている.本研究では,報酬単価の高い身体介護や移動コストのかからないサービスの提供を,準市場の下でのクリームスキミング行動と捉え,非営利・営利,また各法人格による行動の違いを,訪問介護事業所を対象とした調査データから分析した.その結果,以下のことが明らかになった.報酬単価の高い身体介護の提供,移動コストの削減というクリームスキミング行動は非営利より営利がおこなっており,株式会社でその傾向が顕著である.ただし営利との差が大きいのは,社会福祉協議会,社会福祉法人,NPO 法人であり,医療法人は営利に近い経営をおこなっている.移動コストと事業を展開する地域の関連では,町村部の割合の高い社会福祉協議会で移動距離が長くなり,移動コストが大きくなっている.こうした利益の少ないサービスの提供は,事業規模や過疎地であるという地域特性とは関係なく,非営利がおこなっている.また同じ営利でも,有限会社は株式会社ほどクリームスキミング行動をおこなっていない.以上から有料老人ホームなどを経営できる大規模株式会社が利益の高いサービスを選択する適応行動をとり,事業所間の競争の中で勝つという構図をみてとることができる.