2009 年 6 巻 p. 26-40
本稿の目的は,介護保険下における介護現場がかかえる課題の現状を把握し,介護労働のこれからの方向性の一端を検討することである.介護人材の資質向上策としては,介護の質の保障を目指して社会福祉士及び介護福祉士法が,約20年ぶり改正された.しかし,法改正の動向とは裏腹に介護保険法の改正以降の労働環境の変化は,労働条件の悪化や離職率の増加をもたらし,介護人材の量的確保が図れない事態をつくり出している.また,経済連携協定(以下, EPA) による外国人介護労働者の受け入れは,介護労働力として期待されている向きもあるが,一方で, EPAの配慮措置による准介護福祉士の創設が,新たな階層化や低賃金化を生み出すのではないかと危慎されている.介護労働がかかえる課題は,多岐にわたっている. しかし,介護の質の保障と人材の量的確保は重要な政策課題である.加えて,経済のグローバル化なかでは,外国人介護労働者の参入は避けて通れない道でもある.したがって,介護労働が社会的介護の役割を担い働きがいのある労働になるには,働き方の見直し,労働環境の整備と専門職性の醸成,そして,グローバル化に対応し得る国内での介護労働そのものの位置の確立が,必要かつ急務の課題であると考える.