抄録
東京都は,障害者を対象とした「障害者の生活実態調査」を2008年に 行った.そこには興味深い結果が示されている精神障害者が障害を得る ことで就職を諦めたり,妥協したりした者は40%を超える.彼らの多くは, SST,福祉就労等,一般就労に至るまでに何らかの道のりを経ており,そ うした諸活動を彼らは「仕事をする」とカテゴライズする. 本稿は, 「仕事をする」ことに光を当て,彼らの生活において「仕事をする」 ことが如何なる意味を持ち,また,具体的にどのように実践されるのかを 考察の目的とする.調査は,関西にある精神障害者のための地域活動支援 センターで参与観察を行い,同施設の利用者スタッフの相互行為を会話 分析した. 精神障害者は固有の生活のしづらさを得ており,ストレスに脆弱である. 彼らは病状が悪化しないように手段を講じるが,彼らの行為を非精神障害 者が理解できるとは限らない.「仕事をする」ことは他者と共にあること を踏まえれば,コミュニケーションに多くの困難が存在する, 本論文は参与観察,会話分析を通じて,以下のような知見が得られた. 1.精神障害者は病状の悪化を防ぐための生活技法を有する. 2 「仕事をする」ことに,彼ら固有の行為の「形式」が存在する. 3 彼らは非精神障害者と異なる社会化のプロセスを有する. 4. 社会化の捉え直が必要である.