福祉社会学研究
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Print ISSN : 1349-3337
特集 東日本大震災と福祉社会の課題―(交響〉と(公共)の臨界
東日本大震災と男女共同参画
「人間の復興」に向けて
下夷 美幸
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2012 年 9 巻 p. 63-80

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抄録
東日本大震災により生じたさまざまな問題は,それまでの日本社会の歪 みを顕在化させた.震災後のジェンダーをめぐる問題もそのひとつである. 本稿では「災害とジェンダー」に対する政府の問題認識を確認したあと, 震災後にみられるジェンダー問題とそれへの対応,および,震災から復興 への動きをとらえ,その検討を通して,日本における男女共同参画の現実 とその課題について考察した. 阪神・淡路大震災等を経験した女性たちからの問題提起を契機に,災害 時の女性のニーズについての認識も高まり,防災における男女共同参画は, すでに国の政策の基本原則となっている. しかし,実際の防災分野は男性 中心であり,東日本大震災でも過去と同じ女性をめぐる問題が繰り返された. ただし,その問題への対応に関しては,行政の動きや女性支援の市民 活動に以前にはない進展もみられ,今後はこれらの対応の実態を検証し, 災害時における男女共同参画の課題をとらえることが重要である. 求められる復興とは「ふつうの暮らし」が続けられるコミュニティの 再生であり,そのためにはさまざまな属性の人々の視点と力が必要である. よって,復興への女性の参画は不可欠で、ある人々の多様性に基づくコミュ ニティは,今後の防災の基本とされる「減災」の考え方に通じている.多 様な人々の参画によって,この復興の取り組みを進めなくてはならない.
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© 2012 福祉社会学会
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