抄録
社会保障制度は西欧社会における宗教意識国家意識と家族意識など〈伝統文化〉に基づいて発展してきた社会制度である. 日本にとっても中国にとっても社会保険を中心とする社会保障制度は西欧から移植されたものである.20世紀の日本と中国における社会保障制度の導入過程は各自の近代化過程と国情に影響され,各自の〈伝統文化〉との「衝突」もおこった.本稿はっぎの二点を課題とする. 1. 日本と中国の〈伝統文化〉は各自の社会保障制度の整備・運営にどういう影響を与えたか, 2. 社会保障制度の整備や福祉国家化は各自の〈伝統文化〉にどういう変化をもたらしているか,である.