福祉社会学研究
Online ISSN : 2186-6562
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障害者水泳における当事者ニーズの定義の困難性と指導員のポジショナリティ
知的障害者家族成員の影響を中心に
玉置 佑介
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2008 年 2008 巻 5 号 p. 65-86

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抄録
当事者ニーズの適切な把握と定義は,「援助」や「ケア」にまっわる多くの領域において,根本的かつ最重要の実践的課題である.本稿は,専門性や親密性にもとついてはいない障害者水泳指導員たちによる当事者のニーズ定義の困難1生を対象としている.知的障害の当事者へは家族といえども「非当事者」の側からの接近しかありえない.このことは,家族関係のみならず知的障害の当事者と健常者との関係性すべてに言えることである.本稿は,指導員が当事者の親によって語られた「当事者ニーズ」の代替的表明をいかなる「資源」として意味づけているのかをインタビュー・データを通じて提示していく.インタビュー・データの分析結果からは,次の2点が見出される.第1に,親から得られた「当事者ニーズ」の代替的表明が水泳指導を組織化する「資源」として位置づけられていること.第2に,親から得られた「当事者ニーズ」が当事者との関係性を再定位させる契機となっていること,である.結論部では,指導員と当事者の関係性が,指導関係からケア関係へと変化する過程を論じることで,障害者水泳指導員たちの困難性と可能性を提示する.以上の分析結果より,専門性や親密性にもとつくニーズの把握とは異なる一般健常者により近い人びとからの知的障害の当事者への接近可能性が模索される.
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