山階鳥類研究所研究報告
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鳥島におけるアホウドリの最近の繁殖状況,1977/78,1978/79年期
長谷川 博
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1980 年 12 巻 2 号 p. 59-67

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抄録

1.アホウドリの最近の繁殖状況を,年2回,すなわち,卵期と雛期とに,伊豆諸島鳥島に訪れて調査した結果をもとに報告した。鳥島は,この種の,現在確認されている唯一の繁殖地である。
2.1977/78年期には,繁殖期の初めに73羽の成鳥が観察され,少なくとも12羽以上,多くとも20羽以下の雛が育てられた。1978/79年期には,繁殖期初めに80羽の成鳥,雛期に95羽の成鳥が観察され,22羽の雛が育った。
3.成鳥目撃数からみると,最近,非常にゆっくりではあるが着実に個体数が増加しており,おそらく50~60つがいが現実に産卵していると推測されるが,雛の生産数はそれらから予想される数より少ない。
4.1960年代初期と近年の繁殖状況を比較した結果,繁殖に成功する割合は近年低くなっていて,特に,繁殖コロニーの東部地区で,その傾向がはっきりしている。東部地区ではこの20年余りの間にそこに生えている植物の丈が低くなった。この植生の変化が,低繁殖成功率のひとつの原因ではないかと考えられた。
5.1979年3月に,琉球諸島南部の尖閣列島南小島で,16羽のアホウドリ成鳥が調査隊によって再発見された。ただ,そこでの繁殖は確認されなかった。こうした最近の観察などを総合すれば,アホウドリの総個体数はゆうに150羽をこえていて,200羽にかなり近づいていると推測される。
6.繁殖地でなされるべき保護策をいくつか提案し,鳥島で繁殖しているクロアシアホウドリの繁殖状況についても付言した。

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