2009 年 47 巻 7 号 p. 465-472
成熟は果実を食品として利用するための重要なステップであり,成熟の制御は鮮度の維持や品質向上に大きく貢献する可能性がある.成熟期には味覚成分の変化や色素の合成など,様々な代謝反応が同調的に開始,進行するが,これは関連する数多くの遺伝子発現のきわめて厳密かつ精巧な制御によるものであると考えられる.しかし,この制御機構に関してはその重要性に比べて解明が進んでいない.トマトでは成熟過程がまったく進まない突然変異体がいくつかあるが,近年これらの原因遺伝子の単離が相次いで報告されており,成熟開始の制御解明への糸口が見えてきた.