2013 年 51 巻 10 号 p. 679-685
脱窒は,嫌気性微生物の呼吸の一種であり,硝酸イオンNO3-を順次還元し,最終的に窒素N2に変換する生物プロセスである.その変換過程において中間体として生成される一酸化窒素NOは,ラジカル分子であり,タンパク質などの生体物質に損傷を与えるため,微生物は,NO生成後速やかに無毒化する一酸化窒素還元酵素NORを有している.この膜結合性NORの結晶構造が世界で初めて解かれた.これにより,微生物によるNO無毒化の反応機構を明らかにし,呼吸酵素の分子進化を解明できる手がかりが得られた.