2015 年 53 巻 6 号 p. 362-367
交通手段の発達により,世界中の人々がさまざまな国を行き交う時代となった.それに伴い,新興・再興感染症の世界的な流行が危惧されている.現在では,感染症予防策として注射型のワクチン接種が施行されているが,予防効果と取り扱いの簡便さから,経鼻・経口といった粘膜からワクチンを接種する粘膜ワクチンが注目されている.植物科学分野では,1990年代初頭から,医療用として用いられるペプチドやタンパク質を生産する場として遺伝子組換え植物を利用する研究が報告されるようになった.筆者らは,長年イネ種子貯蔵タンパク質の合成・蓄積機構に関する研究を進めてきた.その仕組みを利用すると,イネ種子胚乳組織を医薬品などの有用物質生産の場に変換できる可能性が見いだされた.