2016 年 54 巻 4 号 p. 254-259
地球温暖化による異常高温はヒトのみならずイネなど重要作物の生産に大きな影響を及ぼしつつある.近年,わが国の夏季は頻繁に各所で猛暑となり,高温被害米が多発し,一等米比率を激減させている.このような高温被害米の多発は米生産農家の収入に直接影響するだけでなく,産地のブランドイメージを壊すことにもなりかねず,生産現場では極めて深刻な問題となっている.高温登熟による玄米の白濁化はさまざまな要因が複雑に絡み合って生ずるものと考えられるが,最終的な現象としては胚乳細胞におけるデンプン顆粒の形成不全である.本稿では,分子生理学的視点から玄米の白濁化メカニズムを考察し,高温登熟耐性をもたらす因子ならびに高温障害を軽減する戦略を探る.