2017 年 55 巻 12 号 p. 817-824
農作物の品種判別は食の安心・安全にかかわる重要な検査である.近年食品偽装問題が頻繁にメディアなどで取り上げられ,消費者の食品安全に対する関心は急速に高まっている.また日本で育成された農作物品種が海外へ無断で持ち出されるという不法流出や品種の盗用,偽装表示も報告されている.このような偽装表示や育成者権侵害を取り締まるため,農作物品種を適正に判別できる技術の開発が求められている.本稿では,これまでに報告されている権利侵害の被害状況や実際に開発されてきたDNA分析による品種判別技術,また最後には次世代シーケンサーという近年急速に普及している技術を活用した新しい手法の開発事例について解説する.