化学と生物
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2017年ガードナー国際賞受賞記念特集
レプトマイシン物語
抗真菌抗生物質の探索から始まった新規がん分子標的治療への道
吉田 稔
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2018 年 56 巻 3 号 p. 197-202

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抄録

微生物からのスクリーニングは,時として予想外の大きな発見をもたらす.真菌の形態異常を惹起する抗真菌抗生物質として東京大学の醗酵学研究室で発見されたレプトマイシンは,生命の根幹にかかわるタンパク質核外輸送因子の発見と画期的抗がん剤開発研究を可能にしたユニークな天然物である.レプトマイシンの標的として同定された機能不明のCRM1は,真核生物共通のタンパク質核外輸送因子であることが明らかになった.その後,CRM1は骨髄腫をはじめ多くのがんで重要な役割を果たすことが明らかになり,現在,最も大きな注目を集めるがんの分子標的の一つとなっている.本稿では,微生物スクリーニングから始まって,生物学上の重要な制御因子の発見と新たな創薬標的の発見をもたらしたレプトマイシンの物語を振り返ってみたい.

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© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
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