化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
解説
血小板産生因子トロンボポエチンの発見と次世代受容体作動薬の開発
創薬につなげる発見研究展開のヒント
加藤 尚志
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 56 巻 5 号 p. 331-337

詳細
抄録

ヒトの赤血球,各種の白血球,血小板はいずれも造血幹細胞から増殖・分化して派生する(図1A).これらの血球前駆細胞の増殖・分化・成熟は,造血因子(サイトカイン)や,造血組織環境の細胞相互作用(ニッチ)が細胞外要因として作用する.また細胞内ではシグナル伝達系や転写因子が血球細胞の増殖・分化を調節する.さらに細胞内外でマイクロRNAなどの非翻訳RNAが調節系に干渉する.造血因子では,赤血球産生に欠かせないエリスロポエチン(erythropoietin; EPO, 図2A),白血球の一種である好中球産生を起こす顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor; G-CSF)が発見され,遺伝子組換え製剤がヒト臨床で処方されている.わが国では各々1990年と1991年に承認され,貧血や好中球減少症の治療薬となった.EPOやG-CSFに続いて,血小板産生を担う造血因子トロンボポエチン(Thrombopoietin; TPO, 図2B)が発見され(コラム参照),創薬と臨床開発において数々の教訓を残した.

著者関連情報
© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top