化学と生物
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解説
ラビリンチュラ類の油滴タンパク質TLDP1によるn-3PUFA蓄積の制御機構
油滴タンパク質TLDP1がn-3PUFAの高度蓄積を可能にする
伊東 信渡辺 昂﨑山 亮飯見 勇哉関根 聡美安部 英理子
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2018 年 56 巻 5 号 p. 338-344

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抄録

ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などのn-3高度不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は,心血管疾患リスク低減,血中中性脂肪低下,関節リュウマチ症状の緩和等の機能性が認められ,医薬品やサプリメント原料として活用されている(1).これらのn-3PUFAは海産魚油から製造されているが,実際には海洋細菌,植物プランクトン,ラビリンチュラ類などの微生物が生合成し,食物連鎖によって海産魚類に蓄積されている(2).ラビリンチュラ類の脂質蓄積力は植物プランクトンや細菌を凌駕しており,工業的なn-3PUFA製造に適している(3).ラビリンチュラ類が多量のn-3PUFA含有脂質を細胞内に蓄積できる理由の一つは,高度な油滴(油球,Lipid droplet)形成・維持能力にある.本解説では,ラビリンチュラ類の新規油滴タンパク質TLDP1(4)という切り口からラビリンチュラ類の驚異的な脂質蓄積力の分子基盤に迫りたい.

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© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
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