化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
解説
植物細胞壁多糖の生合成
新規ペクチン生合成糖転移酵素の発見と今後の展望
竹中 悠人梶浦 裕之石水 毅
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 57 巻 2 号 p. 88-94

詳細
抄録

植物は重力に対抗して垂直に立つ強度が求められる.この戦略の一つとして植物は細胞壁をもっていると考えられている.細胞壁とは糖と糖が連なった多糖を主成分とした,細胞膜の外側に作られる構造体である.細胞壁は堅牢かつ柔軟な性質をもっており,外敵や環境変化から細胞を守る鎧としての機能や,細胞内外の情報伝達,植物体の発達や分化,成長にもかかわる多彩な機能をもつ.細胞壁の研究は作物の収量やバイオマスエネルギー生産に直結することから精力的に行われ,細胞壁多糖の生合成に関連する遺伝子が見つかり始めている.しかし,多糖生合成酵素の生化学的性質が十分に解明されていないことが多く,細胞壁の生合成メカニズムの全容はいまだに不明である.本稿では,私たちが生化学的な手法によって見いだしたペクチン生合成にかかわる酵素が属する新規糖転移酵素ファミリーを含め,細胞壁多糖生合成研究の現状と今後の課題について解説する.

著者関連情報
© 2019 公益社団法人日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top