2020 年 58 巻 4 号 p. 204-209
抗体に代表されるバイオ医薬品は,その標的特異性と薬効の高さから市場規模を急速に拡大している.一方,バイオ医薬品をはじめとする難吸収性薬剤は生体に対する透過吸収性が低いため,その投与には注射・点滴といった肉体的苦痛を伴う侵襲的投与法に頼らざるを得ず,さらに通院にかかる時間や経済的負担も相まって患者のQOL(生活の質)低下を招いている.この問題を解決するために,皮膚や粘膜などの上皮で細胞同士を強く接着し,体外からの異物に対するバリアとして機能するタイトジャンクション(TJ)を標的とした薬剤の開発が行われている.TJを一時的に開けることで,経皮・経肺・経粘膜など侵襲性が低く,かつ汎用性の高い投与が可能となると期待されている.