2023 年 61 巻 10 号 p. 493-500
医薬品の開発は1)標的タンパク質の同定,2)薬剤候補物質の探索・選抜,3)臨床試験を経て行われることが多い.最近では,薬剤候補化合物となり得る天然有機化合物を生産する微生物は,天然から取り尽くされたとも言われているが,実際のところ微生物の種類は正確に把握できていない.そのため,未発見の微生物を含む天然に存在する微生物群は,今後も医薬品化合物の宝庫となり続ける可能性はある.微生物が生産する天然有機化合物の全合成研究は医薬品化合物の供給,天然有機化合物の構造決定,生合成経路の解明や新規有機化学反応の発見に大きく貢献しており,産業および学術の両面において重要な役割を果たしている.