抄録
2004年,大阪湾の沖合約1kmに位置する阪南2区人工干潟に,雨水貯留技術を用いてヨシが移植された.ヨシは一般的に,汽水・淡水域で多く生育する植物であり,海水域では生育できないとされてきたが,本干潟では移植後も,その分布域を拡大し,自生している.そこで,ヨシの生育状況とその生長に重要な環境因子の関係を明らかにするため,2013年5月から2014年11月に現地調査を行った.その結果,ヨシ草体の炭素・窒素含有率は比較的高い値(炭素:35-45%,窒素:0.2-2.4%)となり,養分に関する不足はなかった.土壌塩分は,台風上陸後の短期間を除き,21psu未満を示した.また,土壌保水力が高い地点で,ヨシ草体の現存量は高い値を示した.これらより,土壌含水率が高く保たれる場合,ヨシは海水域でも生育可能であることが明らかになった.