2015 年 71 巻 2 号 p. I_1657-I_1662
一定条件の船舶はAISの搭載義務があり位置等の情報を無線で自動的に発信し,近くの船舶や陸上局で認識されている.本研究は東日本大震災時に鹿島港の陸上局で保存されたAISデータを分析して,船舶の津波による漂流挙動と漂流船舶による港湾施設への衝突の関係を検討し,次のことを明らかにした.(1)船舶が大型であるほど地震から長時間経過しても衝突被害が発生する.(2) 水路状港湾の奥部では,反射波の影響で津波の流れが遅くなることから,継続時間の長い津波であっても漂流距離は短くなり,さらに速い速度で衝突する可能性が低くなるので,被害の甚大化が軽減される.(3) 水路状港湾であっても,津波の押し引きの転換時を含めた津波流れの複雑性や操船と言う人為的要因によって,船舶は津波にのって漂流するだけでなく,斜めや横向きの漂流や回転も発生する.