抄録
東シナ海上での気象津波発生時の大気構造を解明することを目的として,2014年12月上旬に長崎県女島周辺海域で海上気象観測を実施した.GPSゾンデを用いて,上空20kmまでの風・気温・湿度などの気象要素の測定を行った.また,船内に設置の気圧計・風速計等による海面付近の気象要素の測定も行った.
大陸上の高気圧が東シナ海上空に張り出し,その先端部が切離されて太平洋上に高気圧が形成された.高気圧に挟まれた東シナ海上で前線が現れ,12月3日の夜間の観測で上空5000m付近で乾燥空気の下降と湿潤空気の上昇による不安定層が現れた.その後,周期10分~60分,全振幅1.0hPa前後の気圧微変動が生じ,12月4日正午前後に枕崎港で最大全振幅80cmの潮位副振動が観測された.予測が極めて困難な現象であることから,本観測は非常に稀少な一例として位置づけられる.