2015 年 71 巻 2 号 p. I_601-I_606
砂州と河口内の波浪および水位応答の関係を理解することは河口管理上重要であるが,定量的な理解は十分ではない.本研究では天竜川河口部を対象として2002年以降の水位・波浪データ及び2006年以降の地形データを用い,両者の関係を分析した.波高伝達率は,砂州幅が50m程度と狭い場合に1%前後,数百mに拡大すると3%前後と開口幅で変動することが分かった.これに対し河口内の平均水位は,開口部断面積が500m2以下に狭まると上昇する傾向が見られたが,砂州フラッシュが生じない中小出水でも開口部断面積との相関が高く,断面積が拡大し平均水位が減少することも確かめられた.また,高波浪時にwave setupによる水位上昇が河口から3km離れた感潮域において確認された.その水位上昇量は沖波波高の10%弱で,感潮域の上限域までほぼ減衰しないことも判明した.