2015 年 71 巻 2 号 p. I_757-I_762
浅海域における物質循環健全化の鍵として干潟や浅場の再生・保全へ向けた活動が進んでいる.干潟や浅場の形成には,河川からの流入土砂の供給と湾内での漂砂移動が重要となるが,土砂供給源の起源推定に関する有効な手法は確立されていない.そこで本研究では,干潟の再生が進む三河湾において,流入する主要河川である豊川・矢作川,河口干潟の土壌堆積物を採取し,51元素の質量分析,およびストロンチウム同位体比の分析を行い,こうした元素濃度や組成比が,干潟構成材の起源推定における化学的なトレーサーとして有効であるのか検討を行った.その結果ストロンチウム同位体比は堆積物の地質情報を良く表しており,希土類含有量のクラスター分析と組み合わせることで,堆積物の起源推定をより正確に推定できる可能性が示唆された.