2016 年 72 巻 2 号 p. I_361-I_366
本研究では,福島第一原発沖に設置された東日本大震災の波高計記録を再現できる修正波源断層モデルを使用し,施設周辺での詳細な津波挙動解析を実施した.写真やプラントデータとの比較を行った結果,後述する2カ所を除き解析結果の整合性が認められた.波高計記録の津波第二波成分は,急激に上昇する1段目と約1分後に計測上限を超える2段目で構成され,港内への浸入やサイトへの遡上過程において重要な役割を担っていることが示され,防波堤を乗り越えた2段目の主な成分が敷地内に浸入したと判断できる.サイト内建屋周辺での詳細な遡上計算を実施し,重要設備の機能喪失時刻をほぼ説明することが出来たが,タービン建屋換気系排気塔付近の津波浸水のピーク付近や1号機ポンプ室への到達の遅れについては,今後の検証と検討が必要である.