抄録
本研究では,防油堤内に大量の重油が流出した条件で津波が襲来する事象を想定した水理実験を実施し,空気と水及び油を考慮したVOF法の多相流解析を行うとともに,津波による油拡散現象についての基礎的考察を行った.防油堤内における油の拡散過程としては,油面に水が着水して,内部波で油を押し出す現象と,分流に伴い発生する循環流で断続的に堤外に流出する現象のどちらかまたは両方が確認された.また,VOF法による多相流解析は,水理実験から得られた津波の防油堤衝突時及び油の拡散時における津波の挙動,津波の衝突時に形成された気泡(空気溜まり)の変形と,油の拡散様子を精度よく再現した.その気泡の変形挙動が油の拡散現象に大きく影響することを確認した.更に,浮上する気泡の形状大変形問題をベンチマーク問題として,水中における気泡の挙動を検証した.