抄録
津波に強い建築構造形式に,ピロティ構造が挙げられる.ピロティ構造の2階以上の壁面に作用する津波外力は設計指針に示されているが,エレベーターホールなどの1階部分小規模構造や1階天井などの各部材に作用する津波外力には明確な算定指針はなく,既存の指針を準用して算出すると大幅に過小評価となる実験報告もある.そこで,これらの各部材に働く波力特性を明らかにすることを目的とし,模型縮尺1/50の水理模型実験を実施した.実験の結果,ピロティ構造の各部材に作用する津波波力は,津波波形の影響を大きく受けることが示された.水位上昇の緩やかな津波により1階小規模構造や天井に作用する波力は,構造物前面の最大浸水深に相当する静水圧によりおおよそ推定可能であるなどが示された.