2017 年 73 巻 2 号 p. I_1543-I_1548
津波による人的被害量の推計を行うことは防災対策立案などに有用だが,さまざまな地域に適用可能な汎用性の高い被害推計手法の構築には至っていない.そこで本研究では,東日本大震災での人的被害および建物被害データを広域にわたり収集し,特定地域の被害特徴に強く影響されない人的被害推計手法を構築した.まず,建物被害から推計曝露人口を算出,実際の人的被害量との関係を調査し,これが対数正規分布に従うと明らかにした.この関係を新たに被害特性係数と定義し活用することで,より汎用性が高く,かつ幅を持った推計が可能な人的被害推計手法を提案した.さらに,岩手県釜石市と宮城県仙台市での東日本大震災の被害状況に本手法を適用し,両対象地域の被害状況を説明できた.また既往の手法との比較から,既往の手法の問題点も明らかにした.