2017 年 73 巻 2 号 p. I_313-I_318
陸域の斜面崩壊による津波は,断層運動による津波に比べ頻度が低いものの,1792年の眉山崩壊に伴う大津波や,1958年のリツヤ湾大津波など,中には甚大な被害をもたらすものもある.その評価手法については,これまでにも幾つか提案されているが,未だ研究事例は少ない.本研究では,崩壊土砂の堆積量や堆積分布を研究レベルにとどまらず実務でも用いられている土砂崩壊モデルにより推定し,解析結果を入力条件として,二層流モデルを用いた非線形長波理論に基づく津波伝播解析を実施することで,陸上から海域への土砂流入に伴う津波を精度よく再現する実務的手法を構築することを目的とした.さらに,眉山崩壊に伴う有明海津波の被害を対象に再現シミュレーションを実施し,本解析手法の妥当性を検証した.