2017 年 73 巻 2 号 p. I_655-I_660
天竜川河口部において,監視カメラの画像を水理・地形データと合わせて分析し,台風来襲時の河口砂州上の水理現象とそれに伴う地形変化の実態を解明した.高波浪時の河口砂州周辺では,沿岸漂砂,岸沖漂砂,砂州越波・越流に伴う土砂移動,各々による地形変化が混在して生じる.砂州標高の低い領域では,波浪の打ち上げによる越波が岸向きに土砂を輸送し,wave setupに伴う平均水位の上昇がその越波数を増加させるのに対し,標高の高い領域では,波浪のスペクトル特性の影響を強く受けて発達する長周期波が,越波の発生と岸向き土砂輸送に本質的な要因である.長周期波が発達する台風期の高波浪時には,砂州広域における越流が発生することで,砂州上および砂州河道側での顕著な土砂堆積が生じる.