抄録
2011年東日本大震災の際に東北地方沿岸域において最大で1m程度の地盤沈下が生じた.その後,地盤高さの回復が徐々に生じている.海底面から見れば地盤沈下は海面上昇が生じたことと等価であることから,Bruun則の検証データになると期待される.そこで,本論文においては,震災直前から2016年12月に至る期間の汀線位置変化に対して線形応答理論を適用し,地盤沈下およびその後の回復過程についていくつかの外力条件を設定し,それらに対する解析解を導いた.また,実測値をもとに変化過程の時定数を求めることが出来た.その結果,初期地盤沈下量に対する最大汀線後退量はBruun則から推定される値と良好な一致を示した.また,海浜応答の時定数は過去の時化を対象とした検討結果に比べてはるかに大きい値であることが判明した.