2020 年 76 巻 2 号 p. I_313-I_318
津波により発生する船舶や自動車のような漂流物は,局所的な流速場や地形の影響を強く受け,複雑な挙動を示す.しかしながら,実際の津波来襲時に漂流物の挙動を観測することは難しく,既往の実験でも単純地形を用いた基礎的な検討がほとんどである.そこで大型,小型の二種類の漂流物模型と沿岸市街地模型を用いた実験を実施し,取得した時空間データから複雑な流速場における漂流特性を解析した.その結果,大型漂流物においては,漂流物挙動や漂着位置はばらつくものの,いくつかの数パターンに分類でき,小型漂流物においては,建物密集度と漂流物の速度の関係を得た.さらに流速場の時空間データを用いた仮想粒子実験から,数値モデルによる再現のためには海底面との接触や漂流物の回転運動の精度良い評価が重要であることを明らかにした.