2020 年 76 巻 2 号 p. I_529-I_534
気候変動に伴う海面水位の上昇による汀線変化の簡便な予測として土砂量変化を考慮できるBruun則に着目し,国内の海岸における深浅測量結果を用いて手法の適用性を検証した.地殻変動等によって相対的な海面上昇を経験した5海岸を対象にした再現計算では,一部の海岸を除けば±1.0m/年程度の精度で過去に生じた汀線変化を再現できることが確認され,10海岸を対象とした平衡断面形状の近似式の精度検証では,Deanによって提案されている海浜断面係数を用いて予測した場合の0.5-2.8倍の汀線変化が実際には生じていることが確認された.南九十九里海岸を対象とした予測の試行では,沿岸漂砂量分布の設定を正確にできれば,精度良く汀線変化を予測できることが確認され,これらの結果を踏まえて土砂量変化を考慮できるBruun則を活用する際の留意点について考察した.