抄録
アメリカにおいて監査プロフェッションによる自主規制レジームの確立した1970年代後半からサーベンス=オックスリー法によって公開会社会計監視審査会が創設される2002年までの期間において,監査プロフェッションに対する規制/監視に関する認識・知覚が変化していった基礎的な背景を,アメリカ特有の規制環境での監査規制機関の発展という点に焦点を当てながら,再検討する。また,監査プロフェッションによる自主規制を特定の歴史的文脈のなかで叙述し,政府規制/自主規制の見地から公開会社監査の規制構造のあり方を浮き彫りにする。こうした考察を基礎として,アメリカ監査規制におけるPCAOBの創設の歴史的意義を再構成していく。とりわけ大規模監査事務所の登場が規制環境に与えた影響を考慮することを通じて,アングロ・アメリカ諸国におけるプロフェッション規制の歴史のなかでそれがいかなる意味を持った現象であったのかを考察する。