九州南方において黒潮に伴う水温前線が20日程度の周期で繰り返し北上する現象を,はじめて三次元的かつ時間発展的に記述することを試みた。2000~2003年に実施した計6回の 三次元的で密な観測で得た水温・流速のデータおよび中之島での水位データを,観測時の前線位置を指標として並べ替え,その妥当性を他の期間に連続して得られた衛星海面水温画像の時系列および中之島での水位データによって検証した上で,現象の三次元的な時間発展を調べた。その結果,水温前線の北上は,薩摩半島南方の大陸棚斜面上に形成された 300 m深に及ぶ構造をもつ高気圧性の黒潮前線渦(暖水舌)が,北東方向に移動して消滅す る過程の一側面であることが分かった。