2017 年 59 巻 7 号 p. 1514-1523
大腸ESDは依然として難易度の高い手技であり,接線方向からのアプローチが難しい症例では粘膜下層が十分視認できず,剥離操作に難渋し,穿孔などを生じる危険性が高くなる.しかし,トラクションにより良好な視野が得られればESDの手技は数段容易となり安全に行うことができる.有効なトラクションを得るには牽引する方向と安定した強さが重要であり,これを目標に多くのトラクション専用のデバイスが考案されてきたが大腸ESDで実際に使用される機会は少なかったと思われる.近年,市販化された「けん引クリップ®(S-O clip)」は通常のクリップと同様に鉗子口を通過可能なデバイスであり,深部大腸においても簡便に使用できる.ESDの主な適応である20mm~50mm程度の平坦型腫瘍においては終始安定したトラクション効果が得られており,大腸ESDを効率よく安全に行う上で有用なデバイスとなるであろう.