日本海洋学会誌
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南極環流の力学の諸問題
I 東西輸送量
市栄 誉
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1970 年 26 巻 6 号 p. 340-353

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抄録

南極環流の運動方程式を無次元化すると, ロスビー数と水平エクマン数はそれぞれ10-4と10-5になるが垂直エクマン数は海底近くで1に近い. 運動方程式を表面から海底まで積分しさらに緯度圏上で平均すると, その南北成分の主な項は圧力傾度項とコリオリ項 (地衝的) であるが東西成分の主な項は表面 (風) と海底における歪力となる. 海底近くの渦動粘性を102cm2/secの程度にとって風の歪力と海底の歪力の釣合から計算すると全東西輸送量はリィドとノーリン (1970) がドレイク海峡の観測から求めた200×106m3/secに近くなる.
北向きの輸送は東西方向の輸送方程式のコリオリ項として西風による東向きの輸送を減ずる.北向き輸送はドレイク海峡の南では南極大陸の陸水の放出によりおこり, 風成輸送を10%程減じ, 海峡の北では南米大陸が環流を妨げて渦流を作ることによる. MUNK (1966) の予想した底水の北向き輸送はこの効果によるようである. 水平渦動粘性項は東西輸送方程式では値が109cm2/sec以下なら陸岸近くを除いて無視できる.

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