海の研究
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著しく富栄養化の進行した洞海湾の植物プランクトン出現特性
山田 真知子梶原 葉子
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2004 年 13 巻 3 号 p. 281-293

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抄録

1980年~1995年の洞海湾における海水中の栄養塩濃度の年平均値と最大値は,全窒素において474μMと1,290μM,全リンにおいて4.6μMと13.9μMであった。このように,周年にわたって窒素・リン濃度が著しく高い洞海湾の調査結果を解析して,富栄養型の極相に達している洞海湾の植物プランクトンの出現特性を研究した。洞海湾における植物プランクトン密度の季節変化パターンは,温帯域海洋に特徴的な2山型とは異なり,夏にピークを持つ1山型を示し,富栄養化した淡水湖や河口堰での場合と類似していた。しかし洞海湾が常に高栄養塩条件下にありながら,高水温期においてさえも常には赤潮が形成されない主要な原因は,エスチュアリー循環速度を促進し低日照をもたらす降雨であることが明らかになった。このことから,側面湾の植物プランクトン密度には,気象・物理的環境因子が強く影響していることがわかる。植物プランクンの種多様度指数H'は低く,全窒素や植物プランクトン密度等がこのH'の低下に影響していた。また,側面端の赤潮生物は十数種に限定されたが,赤潮は珪藻によって形成されることが多く,代表的な赤潮生物は他の富栄養化した内湾と同様に珪藻類のSkeletonema属であった。

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© 日本海洋学会
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