海の研究
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海底熱水系における有機化合物および親生元素安定同位体組成の分布から地下生物圏を探る試み(地球化学, <特集>海底熱水系における生物・地質の相互作用)
山中 寿朗奈良岡 浩鈴木 彌生子北島 富美雄難波 謙二高野 淑識小林 憲正堀内 司
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2005 年 14 巻 2 号 p. 267-277

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抄録

本研究の目的は, 水曜海山海底熱水系において, 海底面および海底下における有機物の濃度とその安定同位体組成から, 有機物の起源を有機地球化学的手法により明らかにし, 熱水系における微生物圏の広がりとその生態を解明することである。本研究では, 有機地球化学分析に適した試料採取方法を開発するとともに, バルク有機炭素分析やバイオマーカー組成分析などに取り組んできた。そこで, 本報告では, まず既往の関連する研究をレビューし, これまでに得られた成果の一例として, 堆積物およびコア試料のバルク分析から得た有機物の3次元分布について紹介することにした。有機物の3次元分布は, 海底面においては局所的に高い値を示したが, 海底下ではきわめて少なく, 水曜海山全体の分布には偏りがあることが明らかになった。また, 有機物の炭素同位体組成については, バルクでδ13C=-12&acd;-31‰(対PDB値)の大きな開きが認められ, 分子レベルにおいても炭素数16のモノ不飽和脂肪酸でδ13C=-22&acd;-31‰もの大きな開きがあることが明らかとなった。これは地下生物の炭素源や代謝型の多様性を反映しているものと考えられる。さらに本報告では, 海底下で多量の熱水から溶存有機物を固相抽出できる現場濾過抽出装置(主な新規開発機器)を紹介する。また, チムニーなどの岩石試料を多量に採取し, それら採取した試料が表層海水によって被曝することを最小限に抑える採石器についても紹介する。

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