化学工学論文集
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熱工学
接着剤を用いて固定した吸着式冷凍機の吸着剤層の伝熱特性に関する研究
井上 誠司井上 哲小林 敬幸
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2007 年 33 巻 2 号 p. 135-141

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抄録

吸着式冷凍機を自動車に用いる場合,吸着器内にある熱交換器内の吸着剤を固定し自動車の振動で脱落しないようにすることが必要である.吸着剤の固定方法として水蒸気通過の抵抗になりにくく接着強度に優れるエポキシ樹脂接着剤による固定法を用いた.
この固定法を用いることにより,吸着剤粒子間の接触面積が増加し粒子層の等価熱伝導率が向上することが利点として予想される.一方,接着剤が追加されることで吸着剤の充填密度が低下することや,吸着剤層内の水蒸気拡散が阻害される欠点も予想される.本報では,吸着剤層の等価熱伝導率,吸着剤の充填量,水蒸気拡散係数を求め吸着性能に対する接着剤量の最適値を求めた.
等価熱伝導率は次の2つの手法により求めた.第1は,接着剤で固定した吸着剤を2重円管の隙間に充填し静的な状態で熱伝導率を測定したもの,第2は,蒸発器を用い実際に吸着作用をさせた動的な状態で測定したものである.その結果,両方法により求めた熱伝導率の値には大きな差異を生じることが分かった.これは,吸着作用を伴う場合に生じる吸着剤近傍での水蒸気圧力低下が原因と考えられる.
この結果を踏まえ接着剤量を変化させた際の吸着性能をシミュレーションおよび実験で求め最適値を求めた.今回の条件における接着剤量の最適値は吸着剤量に対しおよそ10 wt%であるという結果が得られた.

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© 2007 公益社団法人 化学工学会
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