化学工学論文集
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[特集]現象の解析とプロセス強化
発熱反応を伴う流動場における不安定現象解析への構成論的アプローチ
藤岡 沙都子松本 秀行黒田 千秋
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2008 年 34 巻 1 号 p. 130-135

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抄録

発熱反応を伴う剪断流動場で局所的な物性の変化に起因して発生する不安定振動現象について,いくつかの異なる解析・モデル化手法を適用することにより振動のパターンの定量化を試み,粘性がパターンに与える影響について解析した.振動発生の定性的因果関係モデルに基づく時間付きペトリネットを用いたシミュレーションにより,振動発生領域における周波数は粘性の増加とともに増加する傾向にあることが確かめられた.発生した流れの振動パターンが次第に崩れ複雑に変化していくパターンの遷移領域においては,ペトリネットのようなシステム論的な手法によるモデル化が困難であるため,パターンの複雑性の定量化にフラクタル解析を導入し可視化画像をもとに粘性の影響について検討した.その結果,遷移領域においても粘性が重要な支配因子であることが確かめられた.また,この不安定振動現象は,運動量移動と熱移動が異なる時間スケールをもちながら相互に作用しあうことで発現すると考えられる.そこで,温度計測情報から流れの状態を予測することを目指し,粘性の変化が温度変動の時間的パターンに与える影響について検討した.時系列のフラクタル解析による時間的パターンの解析により,粘性が温度の振動パターンについても重要な支配因子となっていることが確かめられた.このように観点の異なる解析・モデル化手法を用いることで,発生領域および下流の遷移領域それぞれにおける不安定振動の空間的,時間的パターンの特徴を抽出することができた.

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© 2008 公益社団法人 化学工学会
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