化学工学論文集
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マイクロシステム,ナノシステム
アルキメデスらせん型マイクロチャンネルにおける懸濁粒子の挙動
山崎 吉一後藤 理人仮屋崎 侃諸岡 成治
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2008 年 34 巻 1 号 p. 175-180

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抄録

単位操作をマイクロチャンネルで実現する一助として,アルキメデスらせん形のマイクロチャンネル中に,固体粒子(直径22および40 μmのガラス粒子)を懸濁した水を流し,粒子を分離して排出する操作の可能性を調べた.チャンネルの幅および深さはそれぞれ700 μmおよび500 μm,最内半径は2.5 mm,最外半径は5.0 mmとした.マイクロチャンネルは水平または垂直に保った.らせん内側端から懸濁液を送入し,2.5巻きの地点で2方向に分岐して取り出した.チャンネル内で粒子は2次流れ(Dean渦)によって運ばれ,かつ重力で沈降するために,内外出口における濃度が異なった.採取した懸濁液試料は乾燥後に秤量し,粒子の分離度を求めた.
水平設置の場合:粒子の沈降速度がDean渦の速度に比べて大きくなると,粒子はチャンネル内側の底部に集まった.粒子の沈降速度が,底部壁近傍を流れて内側壁で上昇する流れの速度よりも小さくなると,底部に集まった粒子は上向きDean渦に巻き上げられ,チャンネル内に分散し,出口の分離度が低下した.
垂直設置の場合:粒子が集まる壁面は液流の方向によって変化することが分かった.本実験では,頂部を起点として時計回りに90°回転した位置に分岐点を設置したので,液流速が低い条件下において粒子は内側出口に濃縮された.
以上の実験結果はCFDシミュレーションと合致した.また,液と粒子の速度分布,ならびに粒子濃度分布のシミュレーション結果は,液固分離用のマイクロらせんの設計と操作条件の選定に有意義な示唆を与えた.

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© 2008 公益社団法人 化学工学会
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