2008 年 34 巻 1 号 p. 181-186
赤色蛍光体であるY2O3 : Eu粒子の微粒化を目的として,エマルションの高温燃焼による微粒子製造を行い,当該製造法が生成微粒子の構造および発光特性に及ぼす影響について検討した.原料には硝酸イットリウム・硝酸ユーロピウム混合水溶液および白灯油を用いた.この混合溶液に適当な界面活性剤を加え超音波ホモジナイザーによる撹拌を行うことでW/O(water-in-oil)およびW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルションに調製した.得られたエマルションを酸素富化空気下において高温反応炉に噴霧することで蛍光体微粒子の製造を試みた.その結果,作製した粒子の粒径は100 nm以下のナノ粒子が製造されていることが明らかとなった.W/O/Wエマルションから得られたナノ粒子の粒径は,エマルション内水相径と内水相の蛍光体の前躯体濃度から算出した推算値に比べ小さいことが明らかとなった.一方,蛍光発光強度については,本法により製造したY2O3 :Eu微粒子は最大でも従来の固相法で製造された市販品の約45%程度であった.しかし,本法を適用することで,水溶液のみを用いた噴霧熱分解法により製造される微粒子と比較して蛍光発光強度は1.5倍程度向上することが明らかとなり,本法の有用性が示された.