化学工学論文集
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[特集]現象の解析とプロセス強化
中空糸膜コンタクターのCO2吸収性能に及ぼす膜特性の影響の実験的および理論的検討
高橋 伸英真野 弘岡部 和弘中村 光穂藤岡 祐一三村 富雄八木 靖幸
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2008 年 34 巻 1 号 p. 76-84

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抄録

火力発電所などの排ガス中からCO2を分離回収する技術として,従来の充填塔方式に代わり,中空糸膜を介した化学吸収法は装置をコンパクト化し,分離回収コストを削減できると期待されている.本研究ではPTFE, PPおよびPEの3種類の材質の中空糸膜について向流接触型のモジュールを用い,MEA水溶液を吸収液としてCO2/N2の模擬ガスからのCO2吸収実験を行い,膜の形状,物性が物質移動係数およびCO2吸収性能に及ぼす影響について検討を行った.またシミュレーションモデルを構築し,それらの影響を理論的に検討した.
PEの延伸膜を除き,CO2回収率および総括物質移動係数の実験結果とシミュレーションによる計算結果の一致はおおむね良好であり,モデルの妥当性が確認された.PTFEは中空糸径,膜厚が他の材質のものに比べ大きく,その結果CO2回収率は最も低かった.PPおよびPEの中空糸膜は流速などを調整することにより80–90%の高いCO2吸収率を達成できた.しかし,PTFEでは膜の細孔径の増加に伴いCO2回収率は増加し,理論的にも裏づけられたが,PP, PEではその逆の依存性を示した.
PEの延伸膜ではCO2回収率が著しく増大し,延伸処理が中空糸膜のCO2吸収性能を向上させる有効な手段であることが実証された.しかし,延伸による中空糸膜形状の変化,あるいは延伸により引き起こされうる細孔径,屈曲度の変化を考慮した計算からはそのような著しいCO2回収率の増大は説明することができず,本モデルでは考慮されていない現象が関与していることが示唆された.

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© 2008 公益社団法人 化学工学会
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