化学工学論文集
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[特集]現象の解析とプロセス強化
L-リジン精製イオン交換樹脂多塔システムにおける塔数の影響
永井 秀忠桑原 康Giorgio Carta
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2008 年 34 巻 1 号 p. 85-94

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抄録

L-リジンのイオン交換樹脂分離における多塔システムのシミュレーションモデルを構築し,吸着および溶離時に使用される塔数を変化させ,樹脂とフィード液の向流多段接触を行う場合のL-リジンの挙動を検討した.
具体的には,25°Cでのリジン解離平衡定数,さらには,三菱化学(株)製のカチオン交換樹脂DIAION SK-1B(DVB含量8%)に対してイオン交換平衡定数,樹脂相内拡散係数を測定した.これらの測定データを用い,1.5 cmφ×10.0 cmのカラムでスイッチング時間3600 sの条件で,L-リジンの完全吸着,完全溶離をするのに必要な吸着工程,溶離工程での塔数を検討することとした.
(1)1塔吸着の場合では,リジン塩酸塩水溶液によるフィードリジン量が5.7×10−2 mol/h以上のときに吸着漏れが確認された.これに比べて吸着塔を2塔にした場合は1.2×10−1 mol/h以上,3塔にした場合は1.4×10−1 mol/h以上のときに吸着漏れが観察された.すなわち,塔数を増やす効果は1塔から2塔にする場合に吸着漏れを防ぐ効果が高く,2塔から3塔に増加した場合は効率が顕著には増加しなかった.
(2)1塔溶離の場合は,アンモニア水溶液によるフィードアンモニア量を増加させても,溶離塔出口での完全溶離は困難であった.これに比べて溶離塔を2塔にした場合は1.0×10−1 mol/h以上,3塔にした場合は6.6×10−2 mol/h以上のアンモニア量の場合に完全溶離が可能となることがわかった.すなわち,1塔だけではリジンの完全溶離は不可能であったが,2塔にした場合に完全溶離が可能となった.2塔と3塔では,その効果に顕著な差が見られなかった.

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© 2008 公益社団法人 化学工学会
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