化学工学論文集
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材料工学,界面現象
リプロン・レーザー表面光散乱法を用いたポリマー有機溶剤液の液膜表面挙動の動的観察
沖 和宏長坂 雄次
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2008 年 34 巻 6 号 p. 587-593

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抄録

リプロン・レーザー表面光散乱法(以下,リプロン法)は強制励起等の外乱付与を行う必要がなく,非接触でかつ高速に,液膜のごく表面の情報を取り出すことが出来るため,表面物性計測において,非常に魅力のある強力な計測ツールである.本研究では,新たに開発したリプロン・レーザー表面光散乱測定装置を用いて,機能性フィルムの製造などで多く用いられるポリマー有機溶剤液の測定を目的に,アセチルブチルセルロース(CAB)ポリマーのメチルエチルケトン(MEK)溶液の表面物性測定を行った.接触式測定法(Wilhelmy Plate法)では,ポリマー濃度を変化させても表面張力に変化が見られないが,リプロン法を使って,数10 kHzの周波数帯域で計測を行ったところ,ポリマー濃度の増加に従って,表面張力が低下していく傾向が見られた.ポリマーの液膜表面への吸着モデルを検討したところ,計測したリプロンの数10 kHzの周波数帯域では,リプロン波の変調速度がCABポリマーが液膜表面に吸脱着する時間に比べ圧倒的に速いために,CABポリマーの表面への吸脱着が間に合わず,あたかも不溶性分子膜のように振舞っていると推定されることがわかった.そのため,CABポリマー濃度,分子量の違いによる液膜表面へのポリマーの吸着量変化が,表面張力の低下と対応して,表面弾性率の変化として観察されることがわかった.よって,この表面弾性率の変化に着目することで,従来は測定困難だった低表面張力,低粘度である低濃度のポリマー有機溶剤液の液膜表面へのポリマーの吸脱着のし易さを計測・評価する新しい手法として活用できると考える.

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© 2008 公益社団法人 化学工学会
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