化学工学論文集
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[特集]環境・エネルギー・材料プロセスにおける熱工学の新展開
木質バイオマススラリー流通式連続熱水処理装置の開発
小林 信介岡田 信彦羽多野 重信板谷 義紀森 滋勝
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2009 年 35 巻 5 号 p. 459-464

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抄録

バイオマスの工業的糖化処理を目的として連続水熱処理装置の開発を行った.開発した装置は,木粉–水スラリー流通式の連続水熱装置である.本実験ではまず連続装置実験での操作条件を決定するため,木粉粒径およびスラリー濃度に対するスラリー見かけ粘度について測定を行った.また従来より高い濃度のスギ木粉–水スラリーを原料として連続水熱実験を実施し,処理温度および処理時間に対する木粉の可溶化率および処理溶液中のグルコース濃度測定を行った.さらにスラリーの急速昇温可能な連続装置に対して昇温に時間を要する回分装置を用いて同様の水熱処理実験を行い,水熱反応実験結果の比較を行うことで連続装置の性能評価を行った.スラリーの見かけ粘度は木粉粒径が異なると大幅に変化し,粒径が大きい場合には低せん断速度領域において高い見かけ粘度を示した.固体残渣を含む水熱処理後のスラリー見かけ粘度は処理温度により異なり,原料スラリーの見かけ粘度よりも小さくなることが分かった.連続装置を用いたスギ木粉の水熱反応実験では,スギ木粉の水溶液中への可溶化率は,回分装置の可溶化率とほとんど差が見られなかった.しかしながら,水溶液中のグルコース濃度には,処理装置により大きな違いが見られ,高温,短時間処理において連続装置におけるグルコース濃度は回分装置よりも高いグルコース濃度が得られた.また槽型反応器よりも短時間の熱水処理が可能な連続管型反応器においては,槽型反応器よりも高温で高いグルコース濃度が得られた.

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© 2009 公益社団法人 化学工学会
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