化学工学論文集
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35 巻, 5 号
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[特集]環境・エネルギー・材料プロセスにおける熱工学の新展開
  • 板谷 義紀
    原稿種別: 巻頭言
    2009 年 35 巻 5 号 p. i
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
  • 石神 徹, 亀田 烈, 鈴木 洋, 菰田 悦之
    原稿種別: レビュー
    2009 年 35 巻 5 号 p. 417-424
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究において,吸収冷凍機の蒸発器の伝熱機構をモデル化し,従来報告されている実験式と検証を行った.その結果,管表面が十分に濡れているようなレイノルズ数域では,従来の実験式と一致した.次に,蒸発器・吸収器の各液膜モデルを境界条件として用いて,蒸発器・吸収器間を流動する水蒸気を数値計算した.蒸発器伝熱面に一様蒸発量を与える場合と比較すると,蒸発器伝熱管群周りの速度分布および蒸発器・吸収器の中間領域の速度場が変化することがわかった.
  • 岩本 光生, 松久 純, 赤松 正人, 尾添 紘之
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 425-430
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    半導体の基板材料となるシリコン単結晶は主にチョクラルスキー法で育成されている.この方法ではシリコン融液を入れた石英るつぼから溶解した酸素が結晶に取り込まれるため,融液の流れや温度分布,濃度分布の解明が重要となる.本研究ではこの流れの制御を行うため,チョクラルスキー法融液を模擬した系を用い,ガリウム融液に水平面内回転磁場を印加した場合の影響を,融液内に取り付けた熱電対により測定した.実験条件として融液内に周期的な温度変化が起きる温度条件と結晶回転数を用い,印加する回転磁場の磁束密度,磁場回転数,磁場回転方向を変化させ,融液表面近くに円形に設置した8本の熱電対により温度分布を測定した.その結果,非軸対称な温度分布が観測され,無磁場および水平静止磁場を印加した場合結晶と同じ方向に回転していた.次に結晶と同方向に水平磁場を回転した場合,磁場回転数の増加とともに温度振動の周期が減少した.一方,水平磁場の回転方向を結晶棒と逆方向に回転させると,非軸対称温度分布の回転速度が磁束密度の増加と共に遅くなり1.8 mTの磁束密度の場合,磁場回転速度が−15 rpmで温度振動が消滅した.それ以上の速度の逆方向水平面内回転磁場下では磁場回転方向と同じ方向に温度分布が廻りだし,これは流れが結晶方向回転から磁場回転方向に変化するためだということがわかった.
  • 渡辺 藤雄, 炭谷 一樹, 柏木 強志, 高木 智也, 黄 宏宇, 架谷 昌信, 小林 敬幸
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 431-435
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    デシカント調湿機の高出力化を目指した熱・マイクロ波照射型ハイブリッドデシカント調湿機を提案し,各種ゼオライトの熱・マイクロ波照射加熱によるゼオライトからの吸着水の脱着促進効果を検討した.
    具体的には,2種のゼオライト(4A型,13X型(DF-9))に対して,マイクロ波照射型吸着装置を使用し,温度30°C,相対湿度40%の窒素ガス流通条件下(流速1.62–6.36 m/min)でのマイクロ波(800 W)照射加熱脱着実験ならびにマイクロ波出力50 W,温風加熱温度40–80°C条件下の脱着実験を行った結果,以下のことが明らかになった.
    1)ゼオライトの種類によらずマイクロ波加熱では温風加熱以上の過剰脱着効果を認めた.この効果は難脱着性(4A型)および水蒸気大容量吸着性(13X型(DF-9))を有するゼオライトにおいて顕著であり,4A型,13X型(DF-9)のゼオライトにおけるマイクロ波加熱による脱着量は温風加熱による脱着量のそれぞれ2.22倍および2.59倍となる.この効果を温度基準で換算すると温風加熱脱着より13–43°Cの高温で脱着させたことに相当する.
    2)脱着速度は細孔径の大きいゼオライトにおいて大きい.また,細孔径が同程度では吸着量の大きいゼオライトにおいて大きい.
    3)過剰脱着効果の発現がマイクロ波加熱と同一の温風加熱温度上昇の実験結果により確かめられた.
    4)脱着率は空気流速に対して最小値を示す.
    5)温風加熱脱着および温風とマイクロ波の併用脱着における等脱着量基準の温度は併用脱着において低く,マイクロ波加熱脱着では最大16°Cの熱源温度低減効果を示す.
  • 山村 方人, 馬渡 佳秀, 鹿毛 浩之
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 436-441
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    塗布膜表面の一部を湿潤させ,端部・境界部における塗布厚みを制御する部分湿潤工程を対象とした数値解析を行った.ポリビニルアセテート(PVAc)–トルエン系2成分塗布膜の乾燥過程について,拡散係数並びに蒸気圧の濃度・温度依存性を考慮した1次元拡散方程式を解き,塗膜内の温度・溶媒濃度の時間変化を求めた.部分湿潤がない場合の計算結果は文献値と定量的に一致した.部分湿潤を考慮した場合の計算結果は,特定の厚み方向位置に極大値を持つ特徴的な溶媒濃度分布が生じること,部分湿潤に伴う残留溶媒量の増加によって沸点が低下し,乾燥過程に発泡期間が現れることを明らかにした.
  • 西村 顕, 竹内 将幸, 澁谷 健一, 廣田 真史, 加藤 征三, 中村 義弘, 小島 正嗣, 成田 雅彦, 舘 祐成, 葛山 弘一
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 442-453
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    固体高分子形燃料電池(PEFC)単セル内の熱・物質・電荷移動といった各種連成現象のメカニズムを解明するため,温度面分布が上記連成現象に重要な役割を担うことに着目して,サーモグラフィーにて発電状態のin situ温度計測を行った.可視化用窓セルを作成し,ガス流入・流出位置,流入ガス流量を変化させてカソード側セパレーターのガス流路背面の温度面分布を測定した.また同時に単セル流入・流出ガス流量,入口ガス温度,入口ガス露点温度,ならびに電流・電圧値のデータも収集し,これらの相関を調べた.その結果,カソードのガス流入・流出位置を変更すると,高温領域の位置が変化した.通常運転に対し流入ガス流量を増加させたところ,対流熱伝達の冷却効果で,流入ガス流量の増加に伴い観察面全体の温度が降下した.水素のストイキ比を1.00に設定したところ,発電性能や温度面分布に変化は見られなかった.しかし酸素のストイキ比を1.00に設定したところ,電圧値降下が認められ,また高温領域がガス流出口付近からガス流入口付近へシフトした.観察面の温度面分布はカソード側セパレーターのガス流路内ガス流れや流路構造の影響を大きく受け,酸素の供給方法が温度面分布や反応面分布を支配することが明らかとなった.
  • 宮川 将敏, 小川 正敬, 原 浩樹, 佐々木 忍, 岡野 泰則
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 454-458
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    オートマチック車に用いられる自動変速機の一部である湿式多板クラッチにはペーパー湿式摩擦材が用いられており,摩擦材の性能はクラッチに大きく影響を及ぼすことが知られている.クラッチ係合時において接触面では摩擦熱が発生し摩擦材性能の劣化を引き起こすため,係合面での温度を制御することが求められる.本論文ではクラッチ係合時の係合面ATF流動効果に着目し,伝熱に関する数値解析を行った.その結果,係合時にはATFの流動による熱移動に比べ伝導による熱移動が支配的であることが示され,ATFによる熱抵抗を考慮することが係合面温度を正確に予測する際には重要であることが示された.
  • 小林 信介, 岡田 信彦, 羽多野 重信, 板谷 義紀, 森 滋勝
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 459-464
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    バイオマスの工業的糖化処理を目的として連続水熱処理装置の開発を行った.開発した装置は,木粉–水スラリー流通式の連続水熱装置である.本実験ではまず連続装置実験での操作条件を決定するため,木粉粒径およびスラリー濃度に対するスラリー見かけ粘度について測定を行った.また従来より高い濃度のスギ木粉–水スラリーを原料として連続水熱実験を実施し,処理温度および処理時間に対する木粉の可溶化率および処理溶液中のグルコース濃度測定を行った.さらにスラリーの急速昇温可能な連続装置に対して昇温に時間を要する回分装置を用いて同様の水熱処理実験を行い,水熱反応実験結果の比較を行うことで連続装置の性能評価を行った.スラリーの見かけ粘度は木粉粒径が異なると大幅に変化し,粒径が大きい場合には低せん断速度領域において高い見かけ粘度を示した.固体残渣を含む水熱処理後のスラリー見かけ粘度は処理温度により異なり,原料スラリーの見かけ粘度よりも小さくなることが分かった.連続装置を用いたスギ木粉の水熱反応実験では,スギ木粉の水溶液中への可溶化率は,回分装置の可溶化率とほとんど差が見られなかった.しかしながら,水溶液中のグルコース濃度には,処理装置により大きな違いが見られ,高温,短時間処理において連続装置におけるグルコース濃度は回分装置よりも高いグルコース濃度が得られた.また槽型反応器よりも短時間の熱水処理が可能な連続管型反応器においては,槽型反応器よりも高温で高いグルコース濃度が得られた.
  • 武信 弘一, 宮本 均, 峯元 雅樹
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 465-471
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    固体酸化物燃料電池(SOFC)のセルを単段–30段まで積層した場合の熱的,電気的,流れ分布への影響を評価した.その結果,電池の上下の両端部分では集電板の影響により電流の偏流が発生する,電池の最高温度は上下方向の中央セルにて発生する,最高温度は,およそ20段積層以上では飽和する,セル間の流量偏差は各セルの圧力損失特性が均一の場合,2%程度であることが明らかになった.
  • 稲垣 照美, 志賀 寛史, 遠藤 広樹
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 472-479
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,都市温暖化防止技術の一つとして,建築構造物表面に入射する太陽光を高反射することで内部への蓄熱を抑制できる遮熱塗料に着目した.ここでは,建築構造物の高機能化を目指すとともに,実計測により近赤外域,遠赤外域,そして太陽光における遮熱塗料の遮熱効果を検証した.
    太陽光による実験では,日射の強い時間帯の太陽光に含まれる近赤外光に対する遮熱塗料の遮熱効果は大きく,日の出前・日没後の遮熱効果は小さいことを確認した.近赤外光による実験では,一般塗料(白)と遮熱塗料(白)を比較した場合,遮熱塗料の方が塗布物内部へ通過する熱流束が抑制でき,塗装面温度も低減した.遠赤外光による実験でも,ある程度の遮熱効果が存在した.すなわち,塗装面へ入射する熱流束が同等の場合,その効果は遠赤外光よりも近赤外光の方が大きいことが明らかとなった.なお,この傾向は,近赤外光・遠赤外光ともに,表面へ入射する熱放射の増大に伴い顕著になった.
  • 稲垣 照美, 大野 慎吾, 白土 哲郎
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 480-487
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,通気層付き外断熱建築構造物の熱流体力学的な特性を解析するとともに,その熱的制御に関する研究を行ったものである.その結果,通気層の存在だけではなく,通気層への強制的な通風・制御により建築構造物の室内温度が制御可能なことを確認した.これにより,日射が強くなる夏季においては,通気層を有する外断熱建築構造物が無条件的に通気層を解放することで通気層のさらなる除熱機構としての利用が可能であることを示した.この際,夏季夜間に外気温度が室内温度より高い場合は,室内への熱輸送が行われないように通気層を開閉弁で遮断して室内温度の上昇を防止することが可能である.一方,冬季においては,通気層を遮断することで室内の温熱環境の保持に供するエネルギー負荷を低減できる.
  • 桑原 卓也, 山本 剛
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 488-494
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,窒素化合物として燃料中に最も多く含まれるピロール型窒素から生成するFuel NO生成機構を解明するため,流通管型反応装置を用いた実験と詳細反応モデルを用いた解析を行った.具体的には,ピロールからFuel NOに転換する過程において,H2O付加量が反応に及ぼす影響について検討するとともに,ピロールから生成するFuel NO生成機構について考察を行った.その結果,H2O濃度の上昇により,O+H2O→OH+OHの反応が促進され,Oラジカルが消費されるとともにOHラジカルが生成される.これにともなって,HCN消費反応であるHCN+OHの反応が促進され,NO生成反応であるNCO+O→NO+COが抑制されることが示された.
  • 小糸 康志, 池水 敬勇, 鳥居 修一, 富村 寿夫
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 495-501
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    標記の熱輸送ループは,加熱器,冷却器,貯槽,バルブ,逆止弁および配管から構成されており,蒸気圧を利用して作動液を循環させ,加熱器から冷却器へと,熱を鉛直下向きに輸送するものである.本研究では,熱輸送ループの作動特性について,基礎実験と理論解析を行い,また,冷却源と貯槽,加熱源と貯槽の温度差についても検討した.
    実験では,熱輸送ループ内の温度および圧力の経時変化を測定した.実験結果から,作動液の管内流速を算出し,その流動特性を明らかにするとともに,冷却源と貯槽の温度差と作動条件との関係を示し,当該温度差の低減についても言及した.一方,理論解析では,熱輸送ループの数値モデルを構築し,実験結果との比較によって,その妥当性を確認した.設計条件と作動条件を変化させて解析を行い,加熱源と貯槽の温度差の低減についてまとめた.
  • 小糸 康志, 福田 智章, 池水 敬勇, 鳥居 修一, 富村 寿夫
    原稿種別: ノート
    2009 年 35 巻 5 号 p. 502-505
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    標記のループは,前報で考案した熱輸送デバイスであり,加熱器,冷却器,貯槽,バルブおよびこれらを連結する配管から構成されている.蒸気圧を利用して作動液を流動させ,上部の加熱器から下部の冷却器へと,熱を鉛直下向きに輸送するものである.また,冷却器で放熱した作動液は,貯槽に貯液された後,加熱器へと還流する機構となっている.本研究では,気密性向上の観点から,作動液の還流に関係する配管系,すなわち,加熱器と貯槽とを連結する配管系を簡素化し,その作動特性を確認した.また,実験結果を整理して,冷却源と貯槽の温度差と作動条件との関係を示し,当該温度差の低減に関与する物理量についても検討した.
  • 小倉 裕直, 久保田 将幸, 鈴木 彦司郎, 山川 達也
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 506-510
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,車両のアイドリングストップに対応した省エネルギーおよびCO2削減等の観点から,冷蔵・冷凍車両の走行時に排出される排気ガスや排熱に着目し,その熱をケミカルヒートポンプにより蓄熱しておき,停車時のコンテナ庫内の空調用冷熱源として再利用するシステムの提案と基礎実験を行った.反応系としては,排気ガス触媒通過後の最終排気温度423 Kで蓄熱を行うことが望ましいため,固–気系反応の1つである硫酸カルシウム(CaSO4)系のケミカルヒートポンプを使用した.
    その結果,蓄熱脱水過程では,393 Kレベルの温度域の排熱で蓄熱が行えることが証明されると共に,排熱温度の蓄熱速度への影響が明らかとなった.放熱水和過程では,蒸発器において278 Kの冷熱・熱交換下で冷熱を得られると同時に,反応器では温熱を生成できることが明らかとなった.
  • 中曽 浩一, カン ホング, 青木 拓朗, 深井 潤
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 511-516
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    水素吸蔵合金粒子充填層を対象として熱伝導率の高い炭素繊維を用いた粒子充填層内の伝熱促進を検討した.本研究では,伝熱促進体と熱交換面との間の接触熱抵抗低減を目的として,伝熱管表面に炭素繊維の束を設置した.炭素繊維をらせん状に設置することで伝熱管周囲の有効熱伝導率の改善を図った.炭素繊維の固定方法としてアルミニウムテープを用いる場合と銀ペーストを用いる場合と2種類の方法で検討した.その結果,銀ペーストを用いることで伝熱促進体と伝熱管表面の伝熱抵抗を緩和できることがわかった.これは銀ペーストが伝熱促進体と熱交換面の間の細かい隙間に入り込み効果的に接触熱抵抗を低減した結果であると考えられる.既報の炭素繊維ブラシと比較した結果,熱交換面と伝熱促進体の接触面積が大きいため,接触熱抵抗は小さく,効果的に伝熱促進できた.
  • 岸本 啓, 中川 二彦, 井田 博之, 綾城 崇夫, 松隈 洋介, 峯元 雅樹
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 517-523
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    酸素の製造エネルギーを削減するために,回転式PSA(Pressure Swing Adsorption)による空気の酸素富化方法を提案した.基礎実験に基づき,回転式PSA装置の数学モデルを作成し,シミュレーションにより,その基礎特性と設計指針を明らかにした.得られた設計指針を基に,従来の深冷分離による酸素富化方法と消費エネルギーを比較した結果,今回提案の回転式PSAは,従来方式よりも50%の省エネルギーが図れる.
  • 赤松 正人, 日向野 三雄, 岩本 光生, 尾添 紘之
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 524-531
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,従来,電磁流体力学や磁性流体力学の学問分野では研究対象外と考えられてきた空気や水のような非磁性流体を取り上げ,これら流体の熱,運動量などの移動現象を超伝導電磁石の強磁場下で発生する磁気力によって制御し得るものか検討することを目指す.そして,この成果を工学へ応用し,従来全く考えられなかったようなプロセスの創成を目指す.本論文では,熱CVD法をモデル化した幾何形状の系を取り上げ,その基礎的研究として磁気力作用下における竪型円筒容器内の非磁性流体の流動特性と熱伝達特性の三次元数値計算を試みた.なお,想定したモデル内では,自然対流,強制対流,磁気熱対流の三つの対流が共存するが,研究の第一歩として,非磁性体である常磁性流体の自然対流と磁気熱対流の二つの対流が共存する場合の各特性について調べた.数値計算の結果,自然対流と磁気熱対流の複合対流の過渡特性,定常特性および熱伝達特性は磁気力によって大きく変化することがわかった.例えば,磁場の中心が加熱面のある円筒容器底面より低い位置にあるとき,対流は促進され熱伝達も大きくなる結果が得られた.
  • 両角 仁夫, 宇賀 敏雄
    原稿種別: 報文
    2009 年 35 巻 5 号 p. 532-538
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,自動車用内装部品を加飾する乾式転写装置内におけるふく射伝熱解析を行い,加飾シートが転写される被転写体の表面温度を推算し,被転写体表面温度に対するヒータの設置角度ならびにヒータ温度の影響を検討した.解析対象とした転写装置に設置されている計8枚のヒータのうち,4枚のヒータ角度を残りの4枚のヒータに対して0,15,30°と変化させて被転写体温度に及ぼす影響を検討した.ヒータ角度を変化させると被転写体表面温度の上昇が速くなり,被転写体表面の温度むらへの影響は小さい結果となった.さらに,ヒータ温度を473,513および553 Kと変化させて解析した.ヒータ温度が高くなるにつれて被転写体の温度上昇が速くなる結果が得られたが,被転写体表面の温度むらが大きくなった.したがって,被転写体を均一かつ速やかに加熱するためには,ヒータの配置を変更することが必要となることが示唆された.
移動現象,流体工学
  • 相澤 栄次, 阪野 伸大, 今駒 博信, 大村 直人
    原稿種別: ノート
    専門分野: 移動現象,流体力学
    2009 年 35 巻 5 号 p. 539-542
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    流体のレオロジー特性が撹拌槽の混合に及ぼす効果をヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの酸化還元反応を用いて実験的に調査した.非ニュートン流体として弱いshear-thinning性をもつカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を用い,ニュートン流体としてはグリセリン水溶液を用いた.混合パターンにおいて両者には明確な差はなかった.撹拌レイノルズ数Reおよび,Reappが215より大きい場合,撹拌翼軸の周辺に固体的回転部が出現し,この部分の混合が混合時間を決定した.一方,Reまたは,Reappが195より小さいときは,明確な固体的回転部は現れず,撹拌槽の上半部が先に脱色された.結果として,混合時間は撹拌槽の下半分の混合により決定された.撹拌レイノルズ数がほぼ同じ場合,非ニュートン流体の無次元混合時間はニュートン流体の混合時間よりも短いことがわかった.
粉粒体工学
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 柘植 秀樹, 李 攀, 島谷 直孝, 島村 有紀, 中田 英夫, 大平 美智男
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用生体工学
    2009 年 35 巻 5 号 p. 548-552
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    マイクロバブルに物理的な衝撃を与えると,水中で急激に収縮し,圧壊を起こす.この圧壊により発生した衝撃波またはOHフリーラジカルが細菌の細胞壁を破壊し,殺菌効果を示すと考えられている.一方,オゾンは強い酸化力があり,ウイルスの不活性化,殺菌に用いられている.マイクロバブルの特性とオゾンの殺菌性を組み合わせた,オゾンマイクロバブルについては殺菌への応用が期待されているが,その効果については必ずしも明らかにされていない.
    本研究では枯草菌芽胞に対するオゾンマイクロバブルの殺菌効果に及ぼすポンプ出口圧力,経時時間,供給オゾン濃度,溶存オゾン濃度,供給オゾン量,マイクロバブル発生方法などの操作因子の影響を明らかにすることを目的とした.その結果,オゾンをマイクロバブル化することにより,少量のオゾンで高い殺菌効果を示す実験結果が得られた.
  • 大平 勇一, 福地 渉, 島津 昌光, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用生体工学
    2009 年 35 巻 5 号 p. 553-556
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    スピルリナの従属栄養培養を目的として,スピルリナの増殖に及ぼす有機基質の影響を実験的に検討した.有機基質として糖,有機酸,アミノ酸を用いた.スピルリナの比増殖速度はグルコースを添加した場合が最も大きくなった.しかし,スピルリナは多糖を基質として増殖することが困難であった.培養液にα-ケトグルタル酸,コハク酸,フマル酸を添加した場合,スピルリナの比増殖速度は負の値となった.実験結果から代謝経路を推定した.
エネルギー
  • 三宮 豊, 廣澤 寿幸, 照井 光輝, 菊池 都士, 松下 洋介, 青木 秀之, 三浦 隆利, 川上 理亮
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 5 号 p. 557-565
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,MmNi5系水素吸蔵合金における水素の吸放出について拡散係数の水素濃度依存性,粒径分布および粒子形状を考慮した水素化・脱水素化反応モデルを構築した.
    MmNi5系水素吸蔵合金に純水素を吸放出させたときの水素吸放出量および吸放出速度の実験結果と有限要素法を用いた解析結果との比較を行い,拡散係数および粒子条件が水素吸放出速度に及ぼす影響を検討した,実験より決定した拡散係数を用い,かつ一定と仮定して解析を行った場合,解析結果と実験値は良好に一致した.また,拡散係数の水素濃度依存性を考慮した場合,水素吸放出量および吸放出速度の解析結果は考慮しない場合と比較して大きく変わらないことが示された.ただし,放出の場合,考慮しない場合よりも解析結果は実験値と良好に一致した,そのため,MmNi5系水素吸蔵合金における水素の拡散係数はLaNi5と同様に水素濃度依存性があると推測できた.粒径分布を考慮した場合,平均粒径を用いた解析よりも反応完了までの時間が増大し,粒径の大きな粒子に全体の水素吸放出量が依存することが示された.そのため,水素吸放出量測定試験により水素の拡散係数を推算する場合,粒径分布を考慮することは重要である.粒子形状を考慮した場合,粒子が同じ投影面積を持つとき,扁平率が大きくなるにしたがい,反応が速やかに進行することが示された.また,立方体粒子は球体および楕円体粒子と比較してさらに反応が速やかに進行することが示された.そのため,粒子形状を球体と仮定して得られた拡散係数は実際の拡散係数よりも大きな値になると推測できた.
  • 主藤 祐功, 大久保 天, 秀島 好昭
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 5 号 p. 566-571
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2009/10/03
    ジャーナル 認証あり
    実用規模のスプレーパルス反応器と活性炭織布担持白金触媒を用いて,メチルシクロヘキサン脱水素による水素およびトルエン生成特性と,トルエン水素化によるメチルシクロヘキサン生成特性を評価し,有機ハイドライドを用いたオンサイト水素貯蔵・供給システムの可能性について検討した.メチルシクロヘキサン脱水素反応では触媒温度598 Kで最大転化率0.85と水素発生速度40.2 NL/(g·h)を示したが,副生ベンゼンが顕著であった.また,トルエン水素化反応では触媒温度523 Kで最大転化率0.56と水素貯蔵速度100.4 NL/(g·h)を示した.脱水素反応と水素化反応のアレニウスプロットより活性化エネルギーはそれぞれ108.9 kJ/mol, 13.3 kJ/molであった.さらに,約100 hの脱水素および水素化反応試験では水素発生速度,水素貯蔵速度および転化率は安定に推移し,本プロセスの長時間安定性が示された.本試験結果より有機ハイドライドを利用した10 Nm3/h規模の水素貯蔵・供給システムの水素貯蔵密度は4.06 mass%, 351.9 Nm3-H2/m3に達すると試算された.
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