2010 年 36 巻 6 号 p. 594-604
一辺の長さが約0.9 μmのキューブ状ヘマタイト粒子からなる,格子構造を有する自己集合膜の構造解析を行った.キューブ状粒子はFeCl3水溶液を373 Kで8 d間エージングして合成した.粒子の直接光学顕微鏡観察から,デジタル画像解析法により動径分布関数を決定した.弱い磁場と粒子間の磁気的相互作用が格子構造に及ぼす影響を明らかにするため,キューブ状ヘマタイト粒子の2次元モンテカルロ・シミュレーションも行った.非常に弱い地磁気の場合,粒子の沈降過程を通して鎖状および正方格子構造がガラス平板上に形成した.シミュレーションの結果から,正方格子構造は粒子の磁気モーメントのジグザグな配向によって安定化していることが明らかになった.比較的強い磁場の場合,実験で得られた動径分布関数の第1ピークよりもやや長距離側にブロードなショルダーが現れる.これは理想的な単分散系の場合のシミュレーションによって得られた動径分布関数に現れた3つのピークに相当するものである.このことは,磁場方向に傾いた磁気モーメントを持つ,エネルギー的に安定な斜方格子構造が形成することを示している.