本研究では,乾燥収縮を伴わない多孔体の対流乾燥におけるバインダー偏析を研究対象として,既往のモデルの概念を拡張することで,新たに溶液中拡散を考慮したバインダー偏析モデルを提案した.このモデルによる計算の結果,既往のモデルで導入された溶液中拡散現象を無視するという仮定は,そのモデルの検証に用いられた系に対して十分妥当だったことが定量的に示された.また,溶液中拡散はバインダー偏析を緩和した.さらに,本研究で提案したモデルによるバインダー偏析の推定は,乾燥速度曲線が既知のときのみ有効であり,未知の場合には,本研究で提案した溶液拡散パラメータを用いることで,拡散現象が無視可能な範囲を特定できることが判明した.